土と戯れる日々
私がこの西畑の棚田の一角で農業の真似事を始めたのは昭和62年の夏でした
未だ住いは大阪の吹田市千里丘にあった頃です 近じか生駒に帰ることになっていましたので どこか自然に囲まれた素朴で静かなな農地を求めて生駒山の暗峠付近に広がる西畑を訪れた時 幸運にもこの村にお住いで地主の中尾米吉さんにめぐり合いました
中尾さんはもう80才を過ぎたかと思われるどこか村長を思わすような気骨のある方で 私の野菜造りの夢と情熱に耳を傾けて頂きました 私の話を聞き終わるやいなや即座に「よっしゃ!わかった!」とその足でお貸し頂く土地をご案内して下さいました 全く不思議な出会いです
「ここはどうや」とおっしゃって頂た時は夢ではないのかと思うほど嬉しくなったことを思い出します
「ここで念願の土と戯れることが出来るのか」と自分の心に描いた夢が実現となり思わず「ありがとうございます」これから末永く宜しくお願い致しますと言って感謝感激したことを今も決して忘れません
爾来20
年以上がたちました この出来事が私が生駒に帰ってきて新たに生駒に根を下ろし生駒で生活を始めた礎となったことは間違いありません
吹田の千里山にいた頃から茨木高原近くの泉原で農地を借りて4年ほど野菜造りをしていましたそんな訳で農作業について有る程度のことは学んで知っていましたので心配はありませんでした
ですから経験を生かしてここではすぐに畝立てから始めました しばらく休耕地であったらしく雑草で土は固くなっていましたがまだ元気のある頃でしたので直ぐに12〜3メートルの畝を立てて 先ず大根を播きました
もちろん仕事は現役でしたし最初は住いが吹田でしたので一年目は管理もろくに出来ずにお爺さんに笑われました
2年目の夏には生駒に引っ越して来ましたので休日毎に畑に通うようになりました
その頃には長い畝が4本 短い畝を5本も造っていました
お爺さんやお婆さんから作物の作り方に関していろんな事も教わりました
作物の植える間隔 種を播く時期 などなどです
作物造りの作業段取りはその土地土地で違います またその土地にあった作物を作ることも大事なことです
冬の間に遣っておかなければならない作業も沢山あります 気候は毎年違います その年の気象を肌で感じて種の播き時を決めたりも致します
少しでも経験のある方はご存知でしょうが 農作業はまったく大変です
夏は草との戦いです
私は自然農法を心がけていますので畑に水は遣りませんが その分工夫も致します
たとえば余り水分を必要としないもの植えてみたり また比較的水の好きな作物の根元にはどんどん刈った草で敷き藁をして水分の蒸発を防いだり 畝間にも摘み取った草を重ねて畑全体の水分の蒸発を防いだりしています
ゴウヤが他のつる草に絡まって実を結ぶ
それだけやっても まぐれを除けばなかなか満足のいく収穫はありません でも楽しい!本当に農作業は楽しいのです
芥子粒ほどの小さな種から根を出し 芽が伸びて土と雨と太陽の光を浴びてどんどん葉を作ります
そして花が咲き栄養分の詰まった実をつける 生命の力を感じます
私の自称自然農法は草を刈り堆肥としてその草を畝に漉き込むといった簡単なものです
一度根付くと決して水を遣らないこと 水分は自然の雨と夜露だけに頼ります
ややもすれば荒地農法みたいになりますが これは草刈や手入れが間に合わない夏場によくあることです
でも秋野菜の播種期までには毎年何とか耕して種だけは播きます
そんなサイクルですから休む暇などありません 私のように小さな耕作地でも結構大変ですが本職の農家の方はきっともっともっと大変なことでしょう
私は日々土に戯れることが出来てとても幸せです
畑は夏場が大変です 畑地の乾燥と雑草のはびこりが半端ではないのです
草むらで成長するヤーコン
知らない方は畑にキュウリや茄子が自然に任せてどんどん出来ると思っておられるでしょうが どっこいそうは簡単に行きませんよ
キュウリや南瓜は植え付けと同時にどこから飛んでくるのか小さい時にウリハ虫にやられます
かろうじてやっと実がなると今度はカラスにやられます
雨が降らないと下から葉っぱが枯れてきて実は曲がった小さなひょうたんのようにちじこまり味も落ちます
トマトはへたから腐る病気でさっぱりです
実がつき赤くなって食べ頃になるとヘタから腐ってくるのです
特に今年の日照りは散散でした 20本以上植え付けたパプリカピーマンはちっとも実が成らず葉っぱが伸びる大事な新芽はカメムシの集団に水分を吸い取られほとんど瀕死の状態でした
周りの草との成長競争に敗れた人参は草の中で惨めです それに厳しい残暑が続くと秋野菜がなかなか播けません
それでも暑い中種まきの準備はやっぱりしておかねばなりません
畑に生い茂った草を取り 土を起こして畝を立て 天からの雨を待ちます
農業の真似事でもこんなに雨が何時降るかが心配ですから本職の方はもっともっと大変なのに違いありません
やっと播いた種が無事芽が出て成長が始まりますと 今度は虫がやってくるのです
農薬は絶対遣いませんので虫は全部手で捕ります
相手は空から飛んできて好きなところに卵を産み付けます 悔しいことに虫の成長は野菜の成長より早いのです しかも一番美味しい大事なところを食べるのですからいけません
誰かが言ってましたが虫向かって あんたは葉っぱを食べたんだから葉っぱの養分となって土にお帰りといって土の中に埋め殺すのだそうです
私は指で押さえて圧死の刑を授けます それも憎しみを込めて!
まあ野菜造りの話はつきませんが何時かゆっくり苦労話をいたしましょう
私の自然農園は野菜も沢山作りますが 花も沢山咲きます 花作りも野菜に劣らず楽しいものです 一度植えると毎年楽しめるものを沢山植えています こちらもよければ見学にお越し下さい 運がよければ野菜のお土産もつきますよ!!
私がこのように土に戯れることが出来るのは地主さんである中尾さんのお蔭です 中尾さんありがとうございます 感謝 感謝 いつも感謝を忘れません
自然農園の作物たち
自然農園には時節時節に応じて色んな作物を植え付けますが 折角ですから 食べ物だけでなく結構花なども植えています
皇帝ダリア もその一つです これは高さが3メートルにもなりまさに花の皇帝の様です 皇帝ダリアは咲くのが11月の初めごろからと遅いのですが青く澄んだ秋の空に咲き誇る様子は見事です
欠点は寒さに弱く一度霜が当たると枯れてしまうのがちょっともったい無く思います
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